News Analysis · arXiv:2608.12445 / PURSUE

米政府のUFO映像112本、科学的判定にはデータ不足 WHAT THE PURSUE VIDEOS CAN — AND CANNOT — PROVE

米政府が第5弾まで公開したUAPセンサー映像は、科学的に何を証明できるのか。研究者2人が112本を調べた結果、物体の異常な速度を示すにも、鳥などの通常物体と説明するにも、決定的なデータが足りないことが分かった。

研究公開日
2026年8月12日
調査対象
PURSUE Release 01〜05のセンサー映像112本
研究段階
arXivプレプリント / 査読前
結論
異常運動を証明も否定もできない
PURSUE公開映像112本と、科学分析に不足する距離、撮影機の速度、観測角度、カメラ画角を示す図
映像はある。しかし、速度を決める変数がない 画面上の移動は測れても、実際の速度へ変換するには追加情報が必要になる。UFO Japan Archive作成 · Data: Haqq-Misra & Kopparapu (2026)

30秒で分かる結論

公開映像112本を科学的に検討

研究は映像を否定するためではなく、物体の速度をどこまで数値で絞れるかを調べた。

必要な情報が一本にも揃っていない

距離、撮影機の速度、観測角度、カメラ画角の完全な組み合わせがない。

「偽物だった」という結論ではない

異常な高速物体とも通常物体とも判定できず、追加データが必要だという結論である。

研究が突きつけたのはUAPの否定ではなく、公開の仕方の限界だ。映像だけを見て「超高速だ」と決めることも、「鳥に違いない」と片づけることも、現在の資料では科学的に支えられない。

誰が、何を調べたのか

論文「Limits on Velocity Recovery from the PURSUE Sensor Videos」を発表したのは、Blue Marble SpaceのJacob Haqq-Misraと、NASAゴダード宇宙飛行センターのRavi Kopparapuである。論文は2026年8月12日にarXivへ投稿されたプレプリントで、現時点では査読を通過した研究ではない。

対象は、米政府のPURSUEで2025年末から2026年半ばまでに公開された112本のセンサー映像。軍用機の照準ポッドなどで撮影された赤外線・可視光映像について、画面を横切る物体の速度をどこまで復元できるかを検討した。

所属について: KopparapuはNASA所属だが、この論文をNASAの公式見解とみなすことはできない。著者2人による科学研究として読む必要がある。

なぜ動画だけでは速度が分からないのか

映像上で物体が一秒間に何ピクセル動いたかは測定できる。しかし、小さな鳥がカメラの近くを横切った場合と、大型物体が遠方を高速で飛んだ場合は、画面上では似た動きに見えることがある。

Required対象までの距離

同じ見かけの速さでも、近い小型物体と遠い大型物体では実速度が異なる。

Required撮影機の速度

映像上の動きには、対象だけでなく観測している軍用機自身の移動も含まれる。

Required対象との観測角度

対象が横切るのか、接近・離脱しているのかで、画面に現れる運動が変わる。

Requiredカメラの画角

一ピクセルが実空間のどれだけに相当するかを決めるセンサー情報が必要になる。

論文によれば、この完全な情報一式を備えたPURSUE映像は一本もなかった。画面表示の一部が黒塗りされ、センサーの方位・仰角などが読めないことも分析を難しくしている。

鳥なのか、マッハ5の物体なのか

DOW-UAP-PR113では、物体が約0.1秒、4フレームで画面を横切る。目盛りからカメラ画角を推定できる珍しい映像だが、物体までの距離と角度が不明なため、近距離を飛ぶ鳥から、約1キロ先をマッハ5で飛ぶ大型物体まで区別できない。

DOW-UAP-PR149には大きさの分かる船舶が写っており、基準として利用できる。研究者は物体の相対速度の上限をおよそマッハ0.3〜0.4と計算し、少なくともこの映像では超音速の相対運動を除外できるとした。しかし物体の正体や正確な速度までは決められない。

重要: PR113がマッハ5だったという意味ではない。「距離が分からないため、鳥とマッハ5の大型物体という大きく異なる仮説を映像だけで分けられない」という例である。

この研究が否定したもの、否定していないもの

Supported現在の公開資料には限界がある

速度を決めるための変数が欠け、運動の異常性を科学的に判定できない。

Not supported全映像が偽物・誤認だった

研究は映像の捏造を認定せず、全対象を通常物体と特定したわけでもない。

Not supported異星由来の超高速物体だった

物体の距離や実速度が決まらないため、異常性能の証拠にもできない。

Next step追加データの公開

飛行ログ、センサーメタデータ、距離情報、対応するレーダー記録が検証を前進させる。

公開の価値と、軍事情報の壁

第5弾まで継続して資料を公開したこと自体は、過去より透明性を高める一歩として評価できる。一方、撮影機の位置、センサー性能、飛行経路、レーダー能力は軍事上の機密と結びつきやすく、すべてを無加工で一般公開することが難しい事情もあるだろう。

それでも、科学的検証を掲げるなら、機密を守りながら研究者へ必要な数値を提供する方法を検討すべきだ。撮影機やセンサーの詳細を伏せたまま、距離や速度を幅として示す、認定研究者が安全な環境で未編集データを調べる、といった中間的な方法は考えられる。

ティム・バーチェット米下院議員は2026年5月、政府が保有しながら公開していない「もっと鮮明な」映像が30〜40本あると発言した。また、元国防次官補代理Christopher Mellonは2024年に議会へ提出した文書で、高速移動するUAPを捉えた鮮明な衛星画像を含む情報報告を見たと述べている。どちらも映像そのものの一般公開ではなく、内容を独立検証できる状態にはないが、「公開済み資料が政府保有資料のすべてではない」と考える根拠にはなる。

運営者の見方

運営者コメント: 公開を続けている点は前進だと思う。しかし第5弾まで来ても不鮮明で分析条件の欠けた映像が中心であり、重要な映像や鮮明な映像は依然として伏せられているのではないかと感じる。

米政府と軍が情報を扱っている以上、安全保障上すべてを公開できない事情は理解できる。それでも、正体の解明に必要な情報が削られた映像だけでは、科学者は異常性の有無すら判断できない。公開したという事実だけで透明性が十分になったとはいえない。

これは予想にすぎないが、米政府内にはUAP情報を透明化したい側と、機密や組織防衛のため隠したい側があり、そのせめぎ合いが現在の限定的な公開に表れているように思える。段階的な開示の途中なのか、核心を避けた公開なのかは、今後どの資料が追加されるかで見えてくるだろう。

今回の研究はUAPを否定したのではない。同時に、映像を見ただけで異星由来の超高速物体と断定することも退けた。本当に科学的な解明を望むなら、米政府は公開映像を増やすだけでなく、距離、撮影条件、センサー情報など検証可能なデータも提供する必要がある。

参照資料

研究原文(一次資料)

Haqq-MisraとKopparapuによるプレプリント。112本の分析、速度計算に必要な変数、PR113とPR149の事例を掲載。

arXiv:2608.12445を読む

GreWi(2026年8月14日)

論文の結論と、PURSUE公開をめぐる政治的・科学的背景をドイツ語で紹介した記事。

GreWiの記事を読む

DOW-UAP-PR113

論文が詳しく分析した政府公開映像。物体は約0.1秒で画面を横切る。

DVIDSで映像を見る

DOW-UAP-PR149

船舶を大きさの基準として利用し、相対速度の上限を推定した政府公開映像。

DVIDSで映像を見る

米議会提出資料

Christopher Mellonによる2024年の提言。鮮明な衛星画像を含む情報報告を閲覧したとの記述がある。

議会掲載PDFを開く

UFO Japan Archive

第5弾を含むPURSUE公開資料と、注目資料10選を日本語で探せる。

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公開日・確認日:2026年8月15日

今後の確認点:論文の査読・改訂、著者による追加分析、未編集映像、飛行ログ、センサーメタデータ、距離・レーダー情報の追加公開。

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