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約630点の写真類と約250本の音声に加え、設計図、模型、8ミリ映像、書籍、出版物などが含まれる。
資料群は整理を終え、条件を満たす研究者が予約して利用できる。音声・映像の一部には再フォーマット待ちの制限がある。
図書館が保存対象にしたのは、戦後の建築、航空宇宙、信仰、UFO文化を記録する一次資料としての価値だ。
カリフォルニア州サンマリノのハンティントン図書館・美術館・植物園は2026年9月1日、「McKinney Collection of George W. Van Tassel Papers」の取得を発表した。資料の年代は1916年から2020年に及び、中心となるのは1950年代から1980年代の記録である。
同館にとって、UFO研究文化を中心に据えた初の大規模取得と報じられている。保存されるのはUFOの正体を立証する観測データだけではなく、ひとつの建築物と、その周りに集まった人々、出版、講演、信仰、技術への期待を記録する資料群だ。
写真約630点、音声約250本、設計図6枚
ハンティントンの公式発表と目録によると、資料群には建築模型、設計図6枚、写真プリント・ネガ・スライド約630点、油彩画1点、オーディオテープとカセット約250本、8ミリフィルム、書籍、雑誌、その他の刊行物が含まれる。
写真類にはインテグラトロンの建設過程だけでなく、ジャイアント・ロックに集まった人々や、1950~1970年代のUFOコミュニティーが残されている。音声資料は、ジョージ・ヴァン・タッセルの講演、活動、彼が主宰したCollege of Universal Wisdomの公開プログラムをたどる記録になる。
「約630点」「約250本」という数字は、すべてが未知の飛行物体を撮影・録音した資料という意味ではない。建物、集会、人物、講演、出版活動などを含めたコレクション全体の内訳である。中身を確認する前に「UFO写真630枚が公開された」と読み替えるのは正確ではない。
インテグラトロンとは何か
インテグラトロンは、ジョシュア・ツリーに近いカリフォルニア州ランダースに残る、直径約55フィート、高さ約38フィートの二階建てドームである。骨組みには金属を使わず、集成材と木製ダボを利用して建てられた。建設は1958年に始まり、主要構造は1960年に完成した。
発案者のジョージ・ヴァン・タッセル(1910~1978)は、航空機整備士やテスト飛行検査員として働いた経験を持ち、その後、発明家、著述家、UFO研究家、コンタクティーとして活動した。彼は金星から来たという存在「ソルゴンダ」から着想や数式、建設上の情報を受け取ったと主張した。
ヴァン・タッセルは、インテグラトロンが静電エネルギーを利用して細胞を若返らせ、寿命の延長、反重力、さらには時間移動を可能にすると説明していた。しかし、装置を稼働させるために想定された機械類は、1978年に彼が亡くなるまで設置されず、その後も完成しなかった。
事実と主張の区別:ドーム建築が現存し、設計図や模型、活動記録が保存されたことは確認できる。金星人との交信、若返り、反重力、時間移動の効果を科学的に確認した資料が公開されたわけではない。
砂漠に生まれた戦後UFO文化
ヴァン・タッセルは1947年にモハーヴェ砂漠へ移り、巨大な一枚岩ジャイアント・ロックの近くで空港とカフェを運営した。1954年から1977年にかけては、Interplanetary Spacecraft Conventionを開催し、最盛期には毎年数千人が講演や討論に集まった。
ここで交わされたのは目撃報告だけではない。宇宙旅行、異星人との交信、精神世界、平和運動、新しい科学、健康、建築実験などが混ざり合っていた。インテグラトロンの歴史は、第二次世界大戦後の航空宇宙技術への期待と不安が、宗教的・文化的な想像力へ接続した一例として読める。
資料群にはヴァン・タッセルだけでなく、ジョージ・アダムスキー、ダニエル・フライ、ジョージ・キングなど、20世紀中頃のコンタクティー運動に関係する人物・団体の資料も含まれる。個々の主張の真偽とは別に、UFOが米国社会でどのように語られ、組織化され、出版や集会を通じて広がったかを調べる手掛かりになる。
個人保管から研究可能なコレクションへ
ヴァン・タッセルの死後、資料はCollege of Universal Wisdomのジョージ・リデルを経て、ドン・マッキニーとデイル・マッキニーが引き継いだ。夫妻は砂漠の自宅に設けた温度管理された部屋で、模型や設計図、写真、録音などを保管してきた。
ハンティントンは2025年10月、夫妻から資料群を購入した。2026年9月の発表時点で整理作業は完了し、資格要件を満たす研究者が予約して利用できる状態になっている。模型は閲覧室へ持ち出せず、音声・映像資料の一部も再フォーマットが終わるまで利用できない。
この移管の重要点は、資料の出所と保管経路が記録され、目録によって全体像を把握できるようになったことだ。画像や文書が単独でインターネット上を流通する場合、撮影者、年代、前後関係が失われやすい。コレクション単位で保存されれば、主張が生まれた背景や、資料同士の関係まで検証できる。
図書館の取得は「信じた」という意味ではない
歴史資料を保存することと、その資料に書かれた主張を認定することは別である。ハンティントンが示した収集理由も、インテグラトロンの超常的な機能を証明することではない。南カリフォルニアの建築、航空宇宙産業、科学史、宗教・精神文化、地域史が交差する資料として位置づけている。
同館は希少本や米国史資料を所蔵する研究図書館で、航空宇宙分野ではロッキードの技術者クラレンス・“ケリー”・ジョンソンやベン・リッチの資料なども保有する。そこへヴァン・タッセル資料が加わることで、正統な航空技術史と、その周辺で育った未来像や異星人観を比較できるようになる。
UFO文化は、多くの場合「本当か、偽物か」だけで扱われる。しかし、たとえ超常的主張が立証されなくても、人々がなぜ集まり、何を信じ、どのような建物や出版物を残したかは歴史研究の対象になる。今回の取得は、その価値を公的な研究機関が認めたニュースだと捉えるのが適切だ。
現在は音響体験の場所として残る
インテグラトロンはヴァン・タッセルの死後、所有者の交代と荒廃の時期を経た。2000年代初頭にカール姉妹が取得し、独特の音響を生かしたサウンドバス体験の施設として再生した。2018年には建築・文化上の価値から米国の国家歴史登録財に加えられている。
ハンティントンは2026年10月30~31日に開催する「Strange Science」で、インテグラトロンと関連資料を扱うプログラムを予定している。建物自体を訪れる観光体験とは別に、研究者が設計・活動・思想の形成過程を資料から調べられる基盤が整ったことになる。
日本のUFO資料にも同じ保存課題がある
日本でも、研究団体の会報、目撃者への聞き取りテープ、写真、個人書簡などが、研究者の高齢化や死去、団体の解散によって散逸する可能性がある。今回の取得は海外の文化史だが、真偽の判断とは別に資料の来歴とまとまりを残す必要性は、日本のUFO研究にも通じる。
確認できること/確認できないこと
確認できること:ハンティントンはマッキニー夫妻からヴァン・タッセル資料群を取得し、2026年9月1日に発表した。約630点の写真類、約250本の音声、設計図6枚、模型、8ミリ映像などを含み、整理済みの研究コレクションとして公開している。
確認できないこと:資料群の取得は、ヴァン・タッセルが金星人と交信したこと、インテグラトロンに若返り・反重力・時間移動の能力があること、収蔵写真が未知の飛行物体を記録していることを証明しない。
参照資料
記事公開日:2026年9月2日
情報源区分:A=ハンティントン公式発表・資料目録/B=Los Angeles Timesの現地報道